飯高茂 教授

数学教育について

昨今、特にアメリカなどで顕著にみられることなのですが、数学的思考の尊重に偏して計算技術をおろそかにするという風潮があります。これはいけないと思います。では、ただ計算練習をすればいいのかと言うとそうでもなくて、現代数学を使えば初等的でも十分興味深い計算問題がたくさん作れるのです。大学でとても抽象的で難しい数学を学ぶと、こんなものは中学生がやるような計算とは縁遠いと思うかもしれません。でも、そういう抽象数学の一部分を具体的な形にしてやれば初等的に意味のある計算問題ができるのです。意味のある計算をしているうちに数の性質というものが見えてきて最初のうちは嫌々計算をしているような子でも、数の面白い性質が見えてくるに従ってだんだん夢中になり、何時間も計算を続けるということがあります。このときの「見えてくる」というのはまさに前に述べた「数覚」が磨かれた証拠なのです。こういう風にできることが数学教育の理想なんですが、そういう意味のある計算を紹介できる、つまり現代数学に精通していてそれを初等的な形に応用できる先生がほとんどいないというのは残念なことです。

MESSAGE FOR READERS

数学に関係のない人にとって、数学はあまり役に立たないかもしれません。そのうえ数学を学ぶには本当に忍耐が必要です。なので、忍耐をもって数学に取り組んで下さい。  数学を志している方には、自分を見失わないでほしい、と言いたいです。私なんかは高校の時に数学を志し、その後いろいろ研究しているうちに「こんなことは絶対にできない」と思っていたことができるようになったり、あまりにも難しそうに見えて手さえ出せなかった問題がのちの世代の人の努力で次から次へと解決されたりしました。また、他の分野への応用なんて意図して数学を研究しているわけではないけれど、純粋数学が理論物理学へ応用される例が数多く見つかっています。こんな風に私の数学人生にはdream comes true みたいなことが次々に起こって、自分でも怖いと思うほどうまく進みました。だから皆さんも、自分を見失わずに頑張ってください。きっと夢が現実になりますから。

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掲載:2010年09月09日   category:予備校・教育

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