加藤大基 医師

死を意識して人生観が変わった

さっきの話もあるけど、死を当然意識しますね。それに現在、がんの再発予防法は残念ながらほとんどわかっていないから、自分の努力ではどうしようもない。自分は、祖父母が大体80いくつまで生きていたりして、なんとなく平均寿命からいっても、漠然と80くらいまでは生きるんじゃないかと思っていました。でも、実際こういう歳でがんになってみると、残された時間が非常に短いかもしれない、ってことを考えるわけです。するとやっぱり、一日一日が非常に貴重なんです。だって、80年あると思っていたものが、再発したらあんまり長くはない。短ければ半年か1年だし、長くてもたぶん5年は持たない、それを考えると、とにかくやれるだけのことをやって、なるべく時間をうまく使おう、ということになってくる。だから長く生きるっていうのも重要だけど、その代わりにやれることをもっと凝縮して生きようという考えになってくる。死を意識したときに思ったことは、自分がこのまま死んだら、別に名を残すとかそういう意味ではなく、何も残らないんじゃないかってこと。当時まだ結婚もしてなくて子供もいなくて、ひょっとすると親より先に死ぬかもしれない。そうすると結局、自分があと何年かたって死んだ後、周囲にとって、自分はいてもいなくても変わらないんじゃないか、って思った。例えば、子供がいれば、つながっていくものがあるんだろうけど、そういったものもなく、親より先に死んでしまって、何をやったかというと、よくわからないということで、自分が存在していた意義がないと感じたわけですよ。という感じで、なんでもいいから自分でできることをやろうという意欲というものを、持ったということですかね。

がんになったことを生かした活動

最近では大学の文学部と共同で、死生学というものにも取り組んでいます。例えば死についてのアンケートなどに答えてもらっています。現代というのは、なかなか、死を直接見るなんてことはないわけで、それこそ昔は、戦争があったり、疫病とかでたくさん亡くなったりとか、子供もいっぱい死んでいたり、あと、老人も家で死んでいたのが、今は大半が病院になってしまい、直接死を見ることがほとんどなくなってしまった。それで、現代日本人はどういう風に死を考えているのか等ということを調べようとしています。がん患者さん、一般の人、医療者の方とか幅広くアンケートを今とっています。がんになって、生き方が変わるというのは少なからずあり、僕に限らず、やっぱり時間は限られている、という事に気づいて、何かしなければいけないってことを、よく患者さんもアンケートに書いてくれる。結局、人間いつ死ぬかなんてことは誰にもわからないわけで、僕も80くらいまで生きると思っていたのが、再発すればあっという間に死んでしまうかもしれない。がんになってから死を意識するのではなく、なる前から、死っていうのはどういうものなのか考えることによって、充実した、人生をおくれるんじゃないかってことが死生観教育のひとつの方向性なのですが、そういった活動を広めていきたいですね。死を考えるというのはすごく重要なことで、必ず死ぬのはみんな分かっているんだけれど、いつかは結構わからなくて、例えば、案外早いうちにがんが見つかる可能性もある。がんじゃなくても、事故で死ぬ可能性もあるし。ということで、僕の中では、いつ死んでも悔いはないって言ったらそれは嘘だけれど、それぐらいの気概でいないとだめだな、と思っています。死は避けて通れないし、死を意識することで、生きることに喜びとか充実感を感じられるので、それは重要なことだと思います。

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掲載:2008年09月09日   category:医療

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