佐藤弘志 社長

立ち上げ店長での失敗

今でもそうですが、うちの花形は店長です。店長の上のエリアマネージャーになると、地味な裏方に回ります。やはり、売上をどんどん上げて、アルバイトさんをどんどん育てている店長がスターなんです。そこで僕は「自分も店長をやれば、皆自分のことを尊敬するに違いない」と思いました。当時は自分が失敗するわけない、と思っていたので、町田中央通り店というブックオフ最大のお店の立ち上げをする店長になることを何回も社長の坂本さんにお願いして何とかやらせてもらいました。ですが、見事に失敗しました。というのは、原因は一つで、自分が店長をやる動機が自分のためだったからです。新しいお店に、色んな新しい仕組みを導入しましたが、それはそこのアルバイトさんや社員を幸せにするためではなく、僕が成功するためだったんです。ただ、店舗ってそこで働いているアルバイトさんや社員が「ここで仕事できてよかったな」って心の底から思えるためにあるのであって、店長は皆がそう思ってくれるために、全てのことをしなければいけません。それを自分は分かっていませんでした。自分は朝礼とか終礼で「皆で、ブックオフの新しい時代を作っていくんです。」みたいな、かっこいいことを毎日言うのですが、言えば言うほど皆がしらけていきました。皆は「あ、この人にはそういう夢があるんですね。でも、僕らはいいブックオフのお店を作って皆が幸せに、楽しく仕事ができればいいだけだから僕らには関係ないよ。」と言って、僕とギャップがあったんです。

「自分が一番やっている病」

店長をしていた当時僕は一番といっていいくらい仕事をしていました。2か月のうち休みは1日もなかったし、システム開発とお店づくりの両方をやっていたので、お店の準備が終わった後、目黒にあったシステムを作る会社に車で行って仕事をして、朝になり、会社の空いている机で寝かせてもらって、また車で戻ってきて、「おはようございます」と言って段ボールを運んでいました。そうなると、多くの初心者店長が陥るのですが「自分が一番やっている病」にかかるんです。「俺が一番頑張っている。皆はそこまではやっていないのに、何で文句ありそうなの?」と思ってしまうんです。自分はものの見事にそれにかかっていました。リーダーって皆の問題を解決するためにいなきゃいけないのに、自分一人の夢を追って皆を巻き込んで、そこで生まれてくる不満に対して、「俺こんなにやっているんだから、不満を持つな」と思っていました。それでは組織は崩壊しますよね。最後は皆に囲まれて「佐藤さんがいるから、僕たちは仕事が面白くない。」と言われてしまいました。その後おっかないという恐怖感で、本部に戻ったんです。

失敗したからこそ社長になれたのですよね?

でも失敗だけだったらそのままつぶれちゃっていたと思います。なぜつぶれなかったかというと、自分へのダメ出しを先頭切って自分に言ってくれた社員がいたからなんです。その人が自分に対してどんどん文句を言って、僕はドロドロに駄目になっていました。その後、僕はその人のところに行って「本当に申し訳ありませんでした。自分はもう店長をやめさせてもらうように社長に言うつもりです。」と言った時に、彼が「俺も最初はそうだったんですよね。」と一言言ってくれたんです。あの時の感覚は、すごくリアルに覚えています。ロックグラスに入っているカチンカチンに固まった氷の球みたいな心が、ジュワーっと溶けていく感じがしました。でもその一言がポンって言えるのって、人間力だと思うんですよ。当時僕が店長、彼が副店長でしたから上司に対して物申すのは勇気もいると思いますが、「このままだと店もこの人も駄目になる」と思い、一気に文句を言い、ぺしゃんこになったところでその一言を言う。その人間力によって僕は心を溶かされたんです。でも皆同じ失敗をくぐってきたから、それができる人がうちの会社にはいっぱいいるんです。

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