下澤嶽 事務局長

ボランティアは自己満足?

日本社会では、ボランティアは「自己満足だ」「偽善だ」と決め付けられる傾向にありますね。僕が大学生の頃に「ボランティア活動に関心がある」と父親に伝えたときも、「お前は何を考えているんだ。それはお金を稼いで余裕のある人が余暇でやることだ。お前は自分のこともろくにできない人間だから人様のことなんか出来るわけがない。しかも収入はどうする」と怒られたことを覚えています。

NGOとして仕事をするようになって20年以上になります。僕が実家に戻ると近所のおばさんに「久しぶりね。今何やってるの?」とよく聞かれて、「NGOです」と答えるのですが、よく分からないみたいなんです。ボランティアは無報酬だから、収入になる仕事ではないと考えているんですね。この間も親戚のおじさんが亡くなったので葬式に行ったのですが、父親母親の同じ年代の人たちが大勢いるところで、「何やってるの?」と聞かれて(笑)。NGOのことを職業として説明しきれないところに日本社会のボランティアに対する壁の厚さを感じることがあります。

多少の迷惑は前提

つらい思い出の一つなのですが、シャプラニール(=市民による海外協力の会)というNGOで私が働いていたとき、バングラデシュの現地スタッフのストライキが現場で起きました。120名のバングラデシュ人を雇っていたのですが、2,30人を除いて全員ストライキを宣言して事務室に立てこもる事件が起きたのです。そのときの現場の交渉を僕がやることになりました。解決に時間がかかり、2ヵ月半に渡って交渉が続きました。現地社会に迷惑をかける結果になってしまい、自分の価値観を大きく変える出来事でした。 こうしたトラブルが起きることは時としてあります。外から関わろうとするNGOが、現地社会にまったく迷惑をかけないというのは理想ですが、現実にはありえない。多少なりとも迷惑をかけたり、摩擦を生むことも前提にしなくてはいけないのではないのでしょうか。そういった事実を日本の支援者に伝えることを避けたり、絵に描いたような成功物語しか見せないNGOの態度は真摯とは言えないと思います。

JANICではどういう活動をしているのか?

NGOの数が急増した80年代に、NGOが互いに集まって考え、協働する場をつくろうと組織されたのがJANICです。情報交換だけではなく、NGO組織の経営問題とか、スタッフの育成課題を解決していこうと、様々な活動をしています。研修事業の例を紹介すると、組織マネジメント能力を育てる研修などをよく実施しています。事業計画を合理的に立て、成果がでるためにどうマネジメントしていくか、といった研修です。中堅スタッフが、6ヶ月の長期間、欧米のNGOで実際に仕事に加わって学ぶといった研修もあります。

日本のNGO:都市と地方の格差

NGOは日本には4、500ぐらいあると推定されています。住所が分かって、事務所に電話をかければ誰かが出るという、事務所機能が確立しているNGOが300弱ぐらいです。その8割が東京と大阪に事務所があるといわれています。残りの2,3割が地方都市に分散的にあると思います。地方都市にあるNGOと東京にあるNGOの格差の開きに問題があると、時々感じます。  東京のNGOは、まずNGOの規模が大きく、スタッフのプロフェッショナル化が進んでいます。また、人的、資金的リソースが東京は多い。例えば学生ボランティアを集めるのって東京では比較的可能ですが、地方のNGOにとってはすごく大変なことです。 私も、東京以外のNGOを時々訪ねます。確かに規模は小さいのですが、地域のNGOには特徴があると思います。例えば関わっている人たちの関係が深く、すごくヒューマンな関係だということです。逆に東京のNGOはそういった面がどんどん弱くなってきています。そうやって考えると地域のNGOは、組織の周辺の人間関係に豊かさを持っているのかもしれません。そういった特長を殺さず、東京に集まっている人的、資金的リソースをできるだけ地域のNGOに還元できるようなシステムが必要ではないかなと思ったりします。

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